人事・HR職への転職ガイド【未経験から採用担当になる方法2026年版】

未分類

営業マネージャーだった筆者が、なぜ38歳で人事部に転職したのか

「人事なんて、採用面接して社内調整するだけの仕事でしょ?」——かつて筆者自身がそう思っていたことを、今でも恥ずかしく思い出す。

前職は従業員300名規模のIT企業で営業マネージャーを務めていた。チームの採用面接に同席する機会は多かったが、人事部の仕事を深く理解していたとは言えない。転職を考え始めたきっかけは、部下の離職が立て続いた2023年の秋だった。

半年間で4名が退職。そのうち3名は「キャリアパスが見えない」という理由だった。営業の数字は追えても、人の成長やキャリア設計を組織としてどう支えるかという問いに、自分はまったく無力だと感じた。そこから人事・HR領域に関心を持ち始め、約8ヶ月の準備期間を経て、2024年6月に従業員800名のメーカーの人事部に採用担当として入社した。

未経験からの転職で苦労した点、事前に準備して正解だった点、入社後に知った現実——本稿ではそれらを率直にまとめていく。

人事・HR職の市場動向と求人トレンド

まず、人事職の求人市場を数字で確認しておこう。

リクルートワークス研究所の2025年調査によれば、人事・総務系の中途採用求人数は前年比で14.6%増加した。特に「採用担当」「人材開発」「HRBP(HRビジネスパートナー)」の3領域で求人が伸びている。

背景には、人的資本経営の浸透がある。2023年3月期から有価証券報告書での人的資本情報開示が義務化され、上場企業を中心に人事部門の重要性が急速に高まっている。その結果、従来の「管理部門」としての人事から、「経営戦略を実行する部門」としての人事へとポジションが変化した。

求人サイトdodaのデータでは、2025年の人事職の平均年収は487万円。未経験枠の場合は380〜430万円がボリュームゾーンとなっている。マネージャー職以上になると600〜800万円帯に上昇し、CHRO(最高人事責任者)クラスでは1,000万円を超えるポジションも珍しくない。

人事職の主な職種と業務内容を整理する

「人事」と一口に言っても、実際には複数の専門領域に分かれている。転職活動を始める前に、自分がどの領域を目指すのかを明確にしておく必要がある。

職種 主な業務内容 未経験からの入りやすさ 求められる適性
採用担当 求人票作成、書類選考、面接調整、内定者フォロー 高い コミュニケーション力、営業経験
労務管理 給与計算、社会保険手続き、勤怠管理 中程度 正確性、法律知識
人材開発・研修 社員研修の企画・運営、キャリア開発支援 中程度 企画力、講師経験
制度設計 評価制度・報酬制度の設計・運用 低い(経験者向け) 分析力、経営視点
HRBP 事業部門に入り込み、人事戦略を立案・実行 低い(経験者向け) ビジネス理解、戦略思考

未経験からの転職で最も間口が広いのは「採用担当」だ。営業、接客、コンサルなど対人業務の経験があれば、十分にアピールポイントになる。筆者も採用担当からキャリアをスタートさせた。

未経験から人事に転職するための5ステップ

筆者自身の転職プロセスを振り返りつつ、未経験者が人事職に就くための具体的なステップを5つに分けて解説する。

ステップ1:人事領域の基礎知識をインプットする(1〜2ヶ月)

最低限押さえておくべきは、労働基準法の基本、採用手法の種類(ダイレクトリクルーティング、リファラル、エージェント活用など)、人事評価制度の基礎だ。筆者は以下の3冊を読み込んだ。

  • 『人事の超プロが教える 会社員の教科書』(西尾太著)
  • 『採用学』(服部泰宏著)
  • 『人材マネジメント入門』(守島基博著)

加えて、YouTubeの人事系チャンネルやVoicyの人事パーソナリティの番組も通勤時間に聴いていた。インプット期間は2ヶ月ほどだが、この段階で「人事の仕事を理解している」という姿勢を面接で示せるかどうかが大きな分岐点になる。

ステップ2:関連資格の取得を検討する(2〜4ヶ月)

人事系の資格で最もコストパフォーマンスが高いのは「衛生管理者(第一種)」だ。従業員50名以上の事業場では選任義務があり、実務で直接役立つ。合格率は約45%で、1〜2ヶ月の学習で取得可能。筆者は転職活動開始前にこの資格を取得し、履歴書に記載した。

他に検討に値する資格としては、キャリアコンサルタント(国家資格)、社会保険労務士、メンタルヘルスマネジメント検定II種がある。ただし、社労士は合格率6〜7%と難関であり、転職のためだけに目指すにはハードルが高い。

ステップ3:自分の経験を「人事言語」に翻訳する(1ヶ月)

未経験者の最大の武器は「前職での経験」だ。ただし、それを人事の文脈で語れるように翻訳する作業が必要になる。

筆者の場合、営業マネージャーとしての経験を以下のように言い換えた。

  • 「チームビルディング」→ 組織開発の素養
  • 「部下の育成」→ 人材開発への関心と実践
  • 「採用面接への同席」→ 採用プロセスの理解
  • 「離職防止の取り組み」→ リテンション施策の経験
  • 「目標設定と評価」→ 評価制度運用の実務経験

この「翻訳作業」は、職務経歴書の作成時にも、面接での受け答えにも直結する。

ステップ4:転職エージェントを複数活用する(2〜3ヶ月)

人事職への転職では、総合型エージェント2社と管理部門特化型エージェント1社の計3社を並行利用するのが効率的だ。筆者はリクルートエージェント、doda、MS-Japanの3社を利用した。

管理部門特化型のMS-Japanは、人事職の求人に強く、アドバイザーも人事領域に詳しかった。一方、総合型のリクルートエージェントは求人数の多さで選択肢を広げてくれた。

ステップ5:面接対策を徹底する(並行して実施)

人事職の面接で必ず聞かれるのは「なぜ人事なのか」という問いだ。ここで抽象的な回答をすると落とされる。筆者は前述の「部下の離職をきっかけに人の問題に向き合いたいと思った」というエピソードを具体的に語り、共感を得ることができた。

人事未経験者の面接でよく聞かれる質問と回答のポイント

筆者が実際に受けた面接(全8社)で繰り返し聞かれた質問をまとめておく。

Q1:人事の仕事に対してどんなイメージを持っていますか?
「裏方」「調整役」といった受動的なイメージを口にすると評価は下がる。「経営戦略の実行部隊」「事業成長の基盤を作るポジション」といった能動的な捉え方を示すとよい。

Q2:採用において最も重要なことは何だと思いますか?
正解はないが、「入社後の活躍までを見据えた一貫性のある採用設計」という視点を持っていると好印象だ。単に「良い人を採ること」ではなく、入社後のオンボーディングやリテンションまで含めて語れるかがポイントになる。

Q3:前職の経験をどう人事に活かせますか?
ステップ3で準備した「翻訳」がここで活きる。具体的なエピソードと、それが人事のどの領域に転用できるかをセットで話す。

Q4:労働基準法について知っていることを教えてください
未経験者であっても、36協定、有給休暇の付与ルール、残業時間の上限規制(月45時間・年360時間)程度は答えられるようにしておくべきだ。「勉強中です」だけでは不十分で、最低限の知識があることを示す必要がある。

入社後に感じた「想像と違った」3つのこと

転職して2年が経過した筆者が、入社前と入社後のギャップとして感じたことを3つ挙げておく。

ギャップ1:数字との向き合いが想像以上に多い
人事は「人を扱う仕事」だが、同時に「数字を扱う仕事」でもあった。採用コスト(1名あたりの採用単価:筆者の会社では平均62万円)、離職率、エンゲージメントスコア、研修のROI——経営層への報告はすべて数値で行う。営業時代に培った数字感覚がここで活きている。

ギャップ2:社内調整の負荷が大きい
採用計画ひとつ取っても、各事業部の要望を聞き、予算と擦り合わせ、経営層の承認を得る必要がある。関係者が多いため、合意形成に時間がかかる。調整力に自信がない人は覚悟しておいたほうがいい。

ギャップ3:「ありがとう」と言われる場面が多い
営業時代は受注した時が最大の達成感だったが、人事では「あの人を採用してくれてありがとう」「研修が役に立った」という声が日常的に届く。地味だが、じわじわと効いてくるモチベーション源だ。

人事職で年収を上げていくキャリアパス

未経験で入社した場合、年収380〜430万円からスタートするのが一般的だと述べた。そこからどうキャリアを伸ばしていくかも把握しておきたい。

年収430万→550万円(入社2〜3年目)
採用担当として一通りの業務を回せるようになり、チームリーダーや主任に昇格するフェーズ。採用だけでなく、人材開発や制度設計にも領域を広げると評価が上がりやすい。

年収550万→700万円(入社4〜6年目)
人事マネージャーや課長クラスに昇格するフェーズ。このあたりからHRBPとして事業部門に入り込む役割を担うことも増える。外資系企業への転職で一気に年収を上げるケースもある。

年収700万→1,000万円超(入社7年目以降)
人事部長やCHROを目指すフェーズ。経営会議に出席し、人事戦略を経営戦略と一体で設計できるレベルが求められる。このクラスになると、MBAやグロービス経営大学院でのリスキリングを経験している人が多い印象がある。

筆者自身はまだ入社2年目だが、来期から人材開発領域も担当する予定で、年収は前職から約15%アップの480万円になっている。

2026年に注目すべきHRテクノロジーのトレンド

人事職に転職するなら、HRテクノロジーの動向も押さえておくべきだ。2026年時点で注目度の高い分野を3つ挙げる。

1. AIを活用した採用スクリーニング
書類選考の一次スクリーニングにAIを導入する企業が増加している。ただし、AIバイアスの問題(性別・年齢による不公平な選考)への対策も同時に求められている。

2. ピープルアナリティクス
従業員データを分析し、離職予測やエンゲージメント向上に活用する手法。Excelレベルのデータ分析スキルがあれば、未経験者でも十分にキャッチアップ可能だ。

3. 従業員体験(EX)プラットフォーム
入社から退職までの従業員体験を一元管理するプラットフォームの導入が進んでいる。ServiceNowやSAPのSuccessFactorsなど、大手ベンダーの製品知識があるとプラスになる。

まとめ——人事は「人が好き」だけでは務まらない。だからこそ面白い

人事職への転職を検討している方に伝えたいのは、「人が好き」は必要条件だが十分条件ではないということ。データ分析、法律知識、経営視点、社内政治——さまざまなスキルと覚悟が求められる仕事だ。

しかし、それらを身につけていく過程で自分自身の成長を実感できるのも、人事という仕事の魅力だと筆者は感じている。組織が変わり、人が育ち、事業が伸びる——その起点に立てる仕事は、そう多くはない。

まずは1冊の本を手に取ることから、あるいは転職エージェントに「人事に興味がある」と伝えることから始めてみてほしい。未経験であることは、ハンデではなく、新しい視点を持ち込めるという強みでもあるのだから。


転職エージェントおすすめランキング2026【20代・30代向け徹底比較】
転職エージェントおすすめランキング2026について、実体験をもとに具体的な方法とポイントを解説します。

転職面接で必ず聞かれる質問10選と回答例【2026年版|落ちた回答も公開】
転職面接で必ず聞かれる質問10選と回答例について、実体験をもとに具体的な方法とポイントを解説します。

コメント

タイトルとURLをコピーしました