地方移住×転職ガイド【Uターン・Iターンで年収を下げずに転職する方法2026年版】

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東京で15年間働いてきた筆者が、2025年の春に長野県松本市へIターン転職した。年収は当時の680万円からどうなったかというと、結果的に710万円に上がった。「地方に行くと年収は下がる」という通説は、必ずしも正しくない——これが2年間の転職活動と移住準備を経て得た、最も大きな学びだ。

もちろん、何も考えずに地方求人に応募すれば年収は下がる可能性が高い。地方の平均年収が都市部より低いのは統計的な事実であり、厚生労働省の2025年賃金構造基本統計調査によれば、東京都の平均年収は約592万円に対し、長野県は約418万円。差額は約174万円にもなる。

ではなぜ筆者は年収を下げずに転職できたのか。それは「地方の求人に応募する」のではなく、「東京の給与水準で雇ってくれる地方の企業を探す」というアプローチを取ったからだ。この記事では、その具体的な方法論を余すところなく解説する。


Uターン・Iターン・Jターンの違いを整理する

まず用語を整理しておきたい。混同している人が意外と多い。

  • Uターン:地方出身者が、都市部で就職した後、出身地に戻って転職すること
  • Iターン:都市部出身者が、縁のない地方へ移住・転職すること
  • Jターン:地方出身者が、都市部で就職した後、出身地とは異なる地方へ移住・転職すること

筆者の場合、東京都杉並区出身で長野県松本市への移住だったため、Iターンに該当する。出身地に戻るUターンと違い、Iターンは土地勘がない場所への移住となるため、事前リサーチの重要性がより高くなる。


年収を下げずに地方転職するための3つの戦略

戦略1:フルリモート可能な企業に転職する

最もシンプルかつ再現性の高い方法がこれだ。東京本社の企業にフルリモートで勤務し、住む場所だけ地方に移すパターン。2026年現在、フルリモート正社員の求人は全体の約12%まで増加しており(リクルート調べ、2025年12月時点)、特にIT・Web系の職種では選択肢が広がっている。

このパターンのメリットは、給与水準が東京基準のまま維持される点にある。一方で住居費は大幅に下がるため(東京23区の1LDK平均家賃約14万円→松本市の同等物件で約5.5万円)、実質的な可処分所得は増加する。

筆者はまさにこのパターンで転職した。東京のSaaS企業にリモート勤務しつつ、松本市に居住している。通勤がないため、以前は片道55分かかっていた通勤時間がゼロになり、1日あたり約2時間の自由時間が生まれた。

戦略2:地方に拠点を持つ成長企業を狙う

地方にも、東京水準の給与を支払える成長企業は存在する。特に地方発のIT企業、製造業のDX推進部門、農業テック、観光テックなど、地方ならではの課題を解決するスタートアップは、優秀な人材確保のために都市部と同等かそれ以上の給与条件を提示するケースが増えている。

具体例を挙げると、長野県に本社を置くセイコーエプソンのDX部門は、中途採用で年収600〜900万円の求人を出している。同様に、富山県の不二越、石川県のDMM.comグループなど、地方拠点でありながら高給与の求人は探せば見つかるものだ。

戦略3:自治体の移住支援制度を最大限に活用する

年収そのものを上げる方法ではないが、移住にかかるコストを大幅に削減できるため、実質的な手取り増加に繋がる。主な支援制度を以下にまとめた。

支援制度 内容 金額目安 対象者
移住支援金(国制度) 東京圏から地方への移住者向け 単身60万円、世帯100万円 東京23区在住・通勤者
自治体独自の移住奨励金 各自治体が独自に設定 10〜50万円 自治体による
住宅取得支援 住宅購入・リフォーム費用の補助 50〜200万円 移住者で住宅取得者
引越し費用補助 引越し費用の一部を助成 上限10〜30万円 自治体による
起業支援金 地方で起業する移住者向け 最大200万円 起業する移住者
お試し移住補助 短期滞在の宿泊費等を補助 日額3,000〜5,000円 移住検討者

筆者の場合、国の移住支援金60万円に加えて、松本市独自の住宅取得補助50万円を受け取ることができた。合計110万円の補助は、移住初期費用の約半分をカバーしてくれた計算になる。


地方転職で使うべき転職エージェント・サービス

地方転職に特化したサービスと、総合型サービスの使い分けが重要になる。

地方特化型

  • YOBITSUGI:地方企業に特化した転職エージェント。2024年のサービス開始以降、地方移住希望者の間で評価が高い。キャリアアドバイザーが実際にその地域に住んでいるケースが多く、生活面のアドバイスも受けられる点が強み。
  • LO活(地方就職応援事業):厚生労働省が運営する地方就職支援プラットフォーム。無料セミナーや企業説明会が充実しているが、求人の質にばらつきがある印象。
  • ふるさと回帰支援センター:移住相談の窓口として45都道府県の情報が集約されている。転職支援というよりは移住の総合相談所に近い。

総合型(地方求人もカバー)

  • リクルートエージェント:求人数が圧倒的で、地方求人も一定数ある。ただし地方に詳しいアドバイザーが担当になるかは運次第。
  • doda:「リモートワーク可」のフィルターが使いやすく、フルリモート求人を探すのに適している。
  • ビズリーチ:ハイクラス向けだが、地方のCxOポジションやDX責任者の求人が時折掲載される。年収700万円以上を狙うなら登録しておいて損はない。

筆者は最終的にビズリーチ経由で現職のオファーを受けた。5つのサービスに登録して3ヶ月間活動し、面接に進んだのは8社、内定は3社。うち年収が現状維持以上だったのは2社だった。


筆者のIターン転職プロセス全記録【体験談①】

2023年10月に転職活動を開始し、2025年4月に長野県松本市への移住を完了するまで、約18ヶ月の全プロセスを時系列で振り返る。

2023年10月〜12月:情報収集フェーズ。移住先候補として長野県・静岡県・福岡県の3地域をリストアップ。週末に各地域を1泊2日で訪問し、実際の生活環境を視察した。交通費と宿泊費で約15万円かかったが、この投資は判断材料として大きく役立った。

2024年1月〜3月:松本市に絞り込み。決め手は、東京へのアクセス性(特急あずさで約2時間40分)、自然環境の豊かさ、そして市の移住支援体制の手厚さだった。松本市は移住者向けの相談窓口が常設されており、担当者が住居探しまでサポートしてくれる体制があった。

2024年4月〜9月:転職活動本格化。前述の5つの転職サービスに登録し、フルリモート可能な企業を中心に応募。この期間で応募した企業は23社、書類通過は11社、面接は8社。

2024年10月:現職から内定を受諾。年収は前職比で約30万円アップの710万円。フルリモート勤務で、月1回の東京オフィス出社のみという条件だった。

2024年11月〜2025年3月:移住準備期間。松本市のお試し移住制度(最大2週間・宿泊費補助あり)を利用して実際の生活を体験。住居は中古マンション(2LDK・築15年・駐車場付き)を購入。価格は1,480万円で、東京では到底考えられない金額だった。

2025年4月:移住完了、新生活スタート。

振り返ると、18ヶ月という期間は長いように感じるかもしれない。だが、移住は人生の大きな決断だ。準備期間が長ければ長いほど、ミスマッチのリスクは下がる。「思い立ったらすぐ」ではなく、「1年以上かけてじっくり」が筆者の推奨するスタンスだ。


地方移住後の生活コスト — リアルな家計簿を公開【体験談②】

「年収が同じでも、地方の方が生活費が安いから実質的に豊かになる」とよく言われるが、実際はどうなのか。筆者の移住前後の月間生活費を比較してみた。

項目 東京時代(杉並区・1K) 松本市(2LDK) 差額
住居費 98,000円(家賃) 61,000円(ローン返済) -37,000円
食費 55,000円 42,000円 -13,000円
光熱費 12,000円 18,000円 +6,000円
通信費 8,000円 8,000円 0円
交通費 15,000円(定期代) 22,000円(車維持費) +7,000円
交際費 35,000円 18,000円 -17,000円
その他 30,000円 25,000円 -5,000円
合計 253,000円 194,000円 -59,000円

月あたり約5.9万円、年間にして約71万円の生活費削減に成功している。年収が30万円上がったことと合わせると、実質的な可処分所得は年間約101万円増加した計算だ。

注意点として、地方では車が必須になるケースが多い。筆者も移住にあたって中古車(2020年式のホンダFit、購入価格98万円)を購入した。ガソリン代・保険料・車検代・駐車場代を含めた車の維持費は月約2.2万円。東京時代の定期代(月1.5万円)よりは高いが、行動範囲が格段に広がったことを考えると、個人的には納得感がある。

光熱費が上がっているのは、松本の冬の寒さが原因だ。12月〜2月は暖房費だけで月1万円以上かかることも珍しくない。この点は移住前にもう少し覚悟しておくべきだったと正直に思う。


地方転職で年収を下げないための面接対策

地方企業の面接で「年収を下げたくない」と主張するのは、やり方を間違えるとマイナス評価になりかねない。以下の3つのポイントを押さえておきたい。

ポイント1:「都会のスキルを地方で活かす」という文脈で語る

「年収を維持したい」という要望を前面に出すのではなく、「都市部で培ったスキルや経験を御社の成長に活かしたい。その貢献に見合った報酬をいただければ」という文脈で伝える方が、企業側の受け取り方が良い。

ポイント2:移住の本気度を示す

企業側が最も懸念するのは「移住してもすぐ東京に戻るのでは」という点だ。お試し移住の経験、住居の購入・契約、家族の同意など、移住に対する本気度を具体的なアクションで示すことが重要になる。

ポイント3:地方ならではの価値を提示する

リモートワーク中心の企業であれば、「地方在住であることがデメリットにならない」だけでなく、「地方拠点があることのメリット」まで提示できると説得力が増す。BCP(事業継続計画)の観点、地方市場の開拓、自治体との連携——地方在住ならではの価値を企業に提案する視点を持っておきたい。


移住前に必ずやっておくべきチェックリスト

移住を決断する前に、以下の項目を確認しておくことを強く推奨する。

  1. 医療機関の充実度:持病がある場合、専門医が通える範囲にいるかを確認。地方では総合病院まで車で30分以上かかるケースも珍しくない
  2. 教育環境:子どもがいる場合、保育園・学校の選択肢と通学距離を事前に調査する
  3. インターネット回線の品質:リモートワークの場合、光回線が引けるかどうかは死活問題。山間部では未対応エリアもある
  4. 冬季の気候:雪国への移住の場合、除雪作業の負担や冬用タイヤの費用なども生活コストに含まれる
  5. コミュニティへの馴染みやすさ:お試し移住制度を利用して、地域の雰囲気を事前に体験する
  6. 配偶者・パートナーのキャリア:自分だけでなく、パートナーの就職先も確保できるかを事前に確認する

特に6番目は見落としがちだが、非常に重要なポイントだ。筆者の知人には、自分の転職先は決まったものの、配偶者の就職先が見つからず移住を断念したケースが2件あった。


まとめ — 地方移住×転職は「準備の質」で決まる

地方移住と転職を同時に成功させるためのポイントは、以下の3つに集約される。

  1. フルリモート求人 or 地方の成長企業を狙えば、年収を維持・向上させることは十分に可能
  2. 移住支援制度を最大限活用し、初期コストを抑える
  3. 最低でも1年以上の準備期間を確保し、お試し移住で生活の実態を体験する

「いつかは地方で暮らしたい」と漠然と考えている人は多いだろう。だが、漠然とした想いのままでは、いつまで経っても動き出せない。まずは今週末、移住先候補の自治体のホームページを開いて、移住支援制度のページを読んでみてほしい。そこが第一歩になる。


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