38歳で転職できたのは、2年前の勉強会で隣に座った人のおかげだった
筆者が前職から現在のポジションに移ったのは38歳のときだ。転職エージェント経由ではなく、2年前に参加した業界勉強会で知り合った人からの紹介がきっかけだった。その人とは勉強会後の懇親会で30分ほど話しただけだが、LinkedInでつながり、半年に1回ほどオンラインでランチをする間柄になっていた。
転職市場では「非公開求人の70%はリファラル(紹介)で埋まる」と言われることがある。この数字の正確性はさておき、筆者の周囲で35歳以上の転職に成功した人の多くが、何らかの形で人脈を活用しているのは事実だ。
この記事では、社外ネットワーキングの具体的な方法を5つ紹介する。「人脈作りが苦手」「何から始めればいいかわからない」という方に向けて、筆者自身の経験と、キャリアコーチとしてサポートしてきた約120名の事例をもとにまとめた。
なぜ「社外」の人脈が転職に効くのか
社内の人脈ももちろん重要だが、転職という文脈では社外のネットワークが決定的な意味を持つ。理由は3つある。
1. 情報の非対称性を埋められる
転職サイトに掲載される求人は、企業が採用したいポジションの一部にすぎない。特に経営幹部や専門職のポジションは、まず社内のリファラルで候補者を探し、見つからなければエージェントに依頼するという流れが多い。社外の人脈が広ければ、この「見えない求人」にアクセスできる確率が上がる。
2. 第三者の推薦が選考を加速させる
書類選考で落ちる確率は平均して75〜85%と言われている。しかし、社員紹介で応募した場合、書類通過率は50%以上に跳ね上がるというデータもある。紹介者のフィルターを通過しているという事実が、採用担当者の心理的なハードルを下げるわけだ。
3. 業界の温度感をリアルタイムで掴める
転職サイトの求人票からは読み取れない情報がある。「あの会社は今、組織改革の真っ只中で大変らしい」「このポジションは前任者が3か月で辞めたから注意したほうがいい」といったリアルな情報は、人脈経由でしか手に入らない。
社外ネットワーキングの具体的な方法5選
方法1:業界特化型の勉強会・ミートアップに参加する
最も王道かつ効果的な方法だ。connpassやTECH PLAY、Peatixなどのプラットフォームで、自分の業界や職種に関連するイベントを探して参加する。
筆者が意識しているのは以下の3点だ。
- 参加者30〜50人規模のイベントを選ぶ:大規模イベント(200人以上)は名刺交換で終わりがちだが、30〜50人規模なら懇親会で全員と一言ずつ話せる
- 登壇者ではなく参加者と話す:登壇者は人気で行列ができるが、隣の席の参加者と深い話をするほうが長期的な関係につながりやすい
- 月1回のペースを維持する:週1だと疲弊し、3か月に1回だと記憶に残らない。月1回が継続しやすい頻度だと感じている
筆者の実例を挙げると、2024年にクラウドセキュリティの勉強会に月1回参加していた。6回目あたりで顔なじみが5〜6人できて、そのうちの1人が後に転職先を紹介してくれた。即効性はないが、半年から1年のスパンで確実に効いてくる方法だ。
方法2:LinkedInを「情報発信ツール」として活用する
LinkedInを「転職サイト」としてしか使っていない人が多いが、本来はプロフェッショナルネットワーキングのプラットフォームだ。筆者は週2回、業界に関する短い投稿(300〜500文字程度)を続けている。
投稿の内容は、日々の業務で気づいたこと、読んだ記事への意見、登壇や参加したイベントの振り返りなど。専門性を示しつつ、自分の考えを添えることがポイントだ。
この運用を1年続けた結果、フォロワーは約1,200人に増え、月に2〜3件の「お話しませんか」というDMが届くようになった。そのうちの1件が、実際にキャリア相談から採用面談に発展した事例もある。
注意点として、投稿がバズることを目的にしないほうがよい。「いいね」が100件つく投稿よりも、ターゲット層の3人に深く刺さる投稿のほうが、ネットワーキングとしては価値がある。
方法3:副業・プロボノで他社の人と一緒に働く
同じプロジェクトで汗をかいた経験は、名刺交換の100倍強い信頼関係を生む。副業マッチングサービス(Offers、複業クラウドなど)やプロボノ活動を通じて、社外の人と一緒に仕事をする機会を作ることを勧める。
筆者は2025年にスタートアップの業務改善プロジェクトに副業として3か月間参加した。週5時間の稼働だったが、そこで出会った5人のうち3人とは今でも定期的に情報交換をしている。そのうちの1人は大手コンサルティングファームのマネージャーで、筆者のキャリアにとって貴重なメンターになっている。
副業がNGの会社であれば、NPO支援やオープンソースプロジェクトへの参加も選択肢になる。要は「一緒に何かを成し遂げる」経験を社外の人と共有することだ。
方法4:業界のSlackコミュニティ・Discordサーバーに所属する
近年、業界特化型のオンラインコミュニティが急増している。エンジニアならtechbookfest系のSlack、マーケターならMarkeZineのコミュニティ、デザイナーならDesign Mattersなどが代表的だ。
オンラインコミュニティの利点は、地理的な制約がないことと、自分のペースで参加できることだ。ただし、ROMっているだけでは人脈にはならない。週に1回は何かしらのスレッドに有益なコメントを残すことを習慣にしたい。
筆者の経験では、オンラインコミュニティで知り合った人とは、3〜4回のやり取りの後に1対1のビデオ通話を提案すると、関係が一気に深まる。テキストだけの関係から一歩踏み出すことが重要だ。
方法5:OB/OG訪問を「する側」ではなく「受ける側」になる
意外と見落とされがちだが、自分の経験を後輩や異業種の人に共有する「情報提供者」としてのポジションを取ることで、ネットワークは自然と広がる。
CREEDO(旧社会人OB訪問サービス)やMatcher、ビズリーチキャンパスといったプラットフォームに、自分のキャリア経験を登録して相談を受ける側になる。月に2〜3件の相談を受けるだけでも、自分のキャリアを客観的に振り返る機会になるし、相談者がその後成長して有力な人脈になるケースも少なくない。
筆者はCREEDOで年間15件ほどの相談を受けているが、そのうちの2件は、後に業務提携の話に発展した。与える側に立つことで、結果的に自分にも返ってくるという循環が生まれる。
ネットワーキングで守るべき5つのマナー
人脈作りは信頼の積み重ねだ。以下のマナーを破ると、一瞬で信用を失う。
- いきなり転職相談をしない:初対面で「御社に入りたいんですが」は論外。まずは情報交換を目的にする
- 相手の時間を尊重する:カジュアル面談は30分以内に収める。時間オーバーは相手の信頼を削る
- お礼は24時間以内に送る:会った翌日までにメールかメッセージでお礼を送る。具体的な感想を1〜2文添えると印象に残る
- 紹介してもらったら経過を報告する:誰かを紹介してもらった場合、その後の進展を紹介者に報告するのは最低限の礼儀だ
- 見返りを期待しない:人脈は「ギブ9割、テイク1割」のスタンスで接するのが長期的に正解
人脈構築の効果が出るまでの期間
即効性を求めてはいけない。筆者の経験とコーチング実績から、以下のような時間軸で効果が表れることが多い。
| 期間 | 状態 | 具体的な変化 |
|---|---|---|
| 1〜3か月目 | 種まき期 | 勉強会やSNSで知り合いが増え始める。まだ表面的な関係 |
| 4〜6か月目 | 育成期 | 定期的に連絡を取る相手が3〜5人に。業界情報が自然と入ってくるようになる |
| 7〜12か月目 | 収穫期 | 紹介や推薦が発生し始める。転職機会の打診が来ることも |
| 13か月目以降 | 循環期 | 自分も誰かを紹介する側になり、ネットワークが自走する |
重要なのは、転職したいと思ってから人脈を作り始めても遅いということだ。転職を具体的に考える1年以上前から、ゆるやかに社外のネットワークを育てておくのが理想的な進め方になる。
内向型でもできるネットワーキングのコツ
「人付き合いが苦手だからネットワーキングは無理」と感じる人もいるだろう。筆者自身、典型的な内向型だ。懇親会で知らない人に話しかけるのは今でもエネルギーを使う。
内向型の人に勧めるのは、以下の3つのアプローチだ。
- 1対1の関係を深める:パーティー型の大規模交流会ではなく、1対1のコーヒーチャットを月に2〜3回設定する。内向型の人は少人数のほうが深い会話ができる
- 書くことで存在感を出す:話すのが苦手なら、LinkedInやnoteで発信する。文章は内向型の人の強力な武器になる
- 「聞き上手」を武器にする:無理に自分を売り込む必要はない。相手の話を丁寧に聞き、的確な質問をするだけで、信頼は十分に築ける
筆者がキャリアコーチとして見てきた中で、内向型の人のほうが長期的に質の高い人脈を築けるケースは珍しくない。広く浅くではなく、狭く深く。これが内向型のネットワーキング戦略だ。
まとめ:人脈は「今日の一歩」から始まる
転職に役立つ人脈は、計画的に、しかし焦らずに育てるものだ。明日からできることを1つだけ挙げるなら、connpassかPeatixで来月開催される業界勉強会を1つ予約することを勧める。
もしそれもハードルが高いと感じるなら、LinkedInのプロフィールを更新して、今週中に1つ投稿を書いてみてほしい。300文字でいい。完璧でなくていい。「動き出した」という事実が、半年後の自分を確実に変えてくれる。
筆者の38歳の転職は、2年前の「勉強会に申し込む」というたった1クリックから始まった。次の1クリックは、あなたの番だ。





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